コンチャイトロ社はアンデスの麓に3000haのブドウ畑を所有するチリ最大のワイナリーです。その創始者ドン・メルチョの名をラベルに記した同社のフラッグシップ（旗艦）ワイン「コンチャイトロ・ドンメルチョ」は、まさしくチリのトップクラスワインと言えます。チリの政治家でもあり歴史学者でもあったコンチャ家侯爵ドン・メルチョ・デ・コンチャ・イ・トロは、妻のエミリアーナ・スベルカシューと力を合わせて1883年にコンチャイトロブドウ園をスタートさせました。彼はフランスの醸造技術者を招き、フランスのボルドーのカベルネソービニオン、メルローなどのブドウを移植して、最初から世界の高級ワインにひけを取らないワインをチリで造ることを目指しました。ワイナリー設立から1世紀後の1987年、同社は自信作「ドン・メルチョ」を発表しましたが、すぐに豪華客船クイーン・エリザベス２世号のワイ ンリストに載せられ、90年代にはワイン・スペクテーター誌の世 界年間ベスト100の12位（ヴィンテージ1993）に指名されるな ど、瞬く間に南米最高峰の評価を獲得しました。

「ドンメルチョ」に使われるブドウはマピオ渓谷(Mapio Valley)にあるプエンテ・アルト(Puente Alto)という畑から手摘みされたカベルネ・ソービニオン種が使われます。マピオ渓谷の地表はローム層で砂質に粘土が混じっていますが、深くなると小石を多く含むカベルネ・ソーヴィニヨン向きの土壌となっています。同ワインを日本に輸入しているメルシャン（株）のウエッブサイトには次の様に宣伝されています。『アンデス山脈から注がれる、ミネラル と酸素を豊富に含んだ雪解け水の恵 みに加え、昼夜の寒暖差と適度な灌漑設備、乾燥した気候が、この地のブドウ 奥行きと凝縮感、そして無限の可能性を与えているのです。』

ワイン評論家のロバート・パーカーは1995年の「ドンメルチョ・プライベートレゼルブ」（＝ドンメルチョの中で更に厳選されたプレミアムワイン）に関して次の様に述べています。

Creamy black fruits can be found in the medium to dark ruby-colored 1995's aromas. This is a supple, silky-textured, medium to full-bodied wine that bastes the palate with sweet, creamy blackberries and cassis. It is seamless, broad, and harmonious. This beauty additionally possesses a long, pure, and soft finish. It is a wine I would like to insert into a blind tasting of St.-Estephes. Anticipated maturity: 2005-2015."

ほどよく濃いルビー色の1995年物の香りの中にはクリーミーな黒い果物を見出すことが出来る。絹のようにしなやかな飲み心地で、コクの深さは真ん中からフルボディ、甘くクリーミーな黒スグリやカシスの味が舌を刺激する。継ぎ目がないようなスムースさで、幅があり、全体が調和されている。この優れた性質に加えて長く残る純粋で優しい喉ごしの余韻が素晴らしい。（フランスの）サンテステフワインのブラインドテイスティング（＝ラベルを隠して飲んで銘柄を宛てること）に混ぜたら区別がつかないのではないかと思う。2005年から2015年が飲み頃となる。　( Robert Parker's Wine Advocate - April 2002)

さて今回はチリに出張した友人のO社長から、「ドンメルチョ・プライベートレゼルブ1999年」をお土産としていただきました。わざわざプレミアムワインを選んでくるとは、さすがです。感謝感謝！早速馴染みのブラッセリー「リバ・ゴーシュ」に持ち込んで、子羊のロチに合わせて味わってみました。全体のバランスは申し分なく、なるほどパーカーがボルドーワインとブラインドテイスティングしても区別がつかないだろう、という意味がよくわかりました。まさしく「カベルネソービニオン」という感じですが、新大陸ワインによくある荒削りな感じがなく、口中に広がる豊かな味わいが印象的でした。

ブリにオイルをかける峯岸シェフ	ワインにピッタリの子羊のロチ	香りを楽しむ私