1. 白い馬(Cheval Blanc)

サンテミリオンの東の横綱を「オーゾンヌ」とすれば、西の横綱は「シュバルブラン」でしょう。この「白い馬」（Cheval Blanc)という響きのよい名前は、フランスブルボン朝の創始者アンリ四世(1589-1610)が、ある時現在のシュバルブランの辺りにあった宿場にへ白い馬に乗ってやってきて一泊したことに由来するそうです。もともとこの畑は「シャトーフィジャック」というサンテミリオンの大手ワイン畑の一部でしたが、1832年に15ヘクタールばかりがデュカス家へ分離され、デュカスの娘アンリエットが、ジャン・ロサック・フルコーという人と結婚する時に、持参金としてフルコー家に持ってきたものです。聡明だったジャン・フルコーはこの土地がブドウを育てるのに適していることを見抜き、畑を買い増し、ボルドーで初めてという排水設備を敷設し、従来「フィジャック」として売っていたワインを伝説にちなんで「シュバル・ブラン」という名前に代えました。現在の「シュバルブラン」のラベルに誇らしく刷られている金賞メダルは、1862年のロンドンと、1878年のパリのワインコンクールで獲得したものです。このシャトーは1852年以来フルコー家が受け継いで来ましたが、1998年にベルギーの実業家アルベール・フレール(Albert Frere)とベルナール・アルノー(Bernard Arnaullt)に売却しました。

2. シュバルブラン礼賛

ワインジャーナルhttp://www.wine-journal.com/　のニール・マーティン(Neal Martin)は、シュバルブランを次の様に礼賛しています。

How can you not love a bottle of great Cheval Blanc? You must be teetotal, inhuman or dead if the allures of this inestimable wine has not won your heart. Show me a critic that does not adore this wine and I will check his pulse. It is a main contender for my desert island wine because it offers the most pleasure to the senses.

偉大なシュバルブランのボトルを愛さないでいることなんて出来るだろうか？この極上ワインに心を動かさないとしたら、その人はお酒が全く飲めない人か、人情をこれっぽっちも解さない人間か、あるいは死人に違いない。このワインを誉めない批評家がいたら私の前に連れてきてほしい。その批評家の脈を取って調べてやろう。もし私が無人島にワインを持っていくとしたら、このワインをメインにしよう。なぜなら私の五感にもっとも訴えるのがこのワインだからだ。

3.テイスティング

かつてあるワイン評論家がシュバルブランを、「三分の一がサンテミリオン、三分の一がポムロール、三分の一がグラーブ」と表しました。堂々とした芳香と、滑らかな口当たり、そしてしっかりした渋味のバランスの良さという特徴をよく捉えた言い方です。カベルネフランの比率がメルローよりも高いせいか、柔らかさ・繊細さよりもしっかりした骨格を感じさせますが、カベルネソービニオンが殆どないためにメドックワインのような土を感じさせる渋さとは異なるようです。今回は1995年物を飲んでみましたが、スパイスと燻製の香りを感じました。

【参考文献】ワインの女王（山本博：早川書房）　

シュバルブラン　オフィシャルサイト　http://www.chateau-cheval-blanc.com/