ホテルロビーで行われた餅つき

謹賀新年。平成18年元旦の朝食は、ホテル和食レストラン「源氏」の特別和定食。おせち料理に石狩鍋がついていたが、取りあえずビールで一杯、そしてお屠蘇代わりの日本酒を二人で三合と、朝から我等の胃腸は快調である。今朝ホテルの部屋に配られた北海道新聞に『元気のいいサカナ王国　北海道』と題した記事が載っていた。作家の椎名誠氏が、「日本中の海岸べりを取材する連載を5年ほどやったが、日本中いたるところで不漁を嘆いている漁港が多かったのに、北海道はどこでも活気があった。特に強く印象に残ったのは、北海道では船が港に戻って獲物を陸揚げし、それを仕分けする一連の作業がものすごくスピーディなことであった」と書いてあった。同氏は「北の漁港は寒いので、常に水を扱うこうした仕事はてきぱきと動かないと寒くてかなわん、ということもあるかもしれないが、北海道の漁港はどこへ行っても獲物が一杯のことが多かったので、寒さに関係なく素早くやらないと作業が追いつかないのかもしれない」と続けていた。海洋王国日本が元気なくなっている中で、北海道が他の地方を圧して活発なのは嬉しいことだ。「そうだ、サカナ王国北海道！寿司屋通りでの夕食も期待出来そうだ！」と言うと、「あのぉ、まだ朝食が終わったばかりなんですけど・・・」と、ワイフに呆れられた。食後ホテルのロビーで行われた餅つきを眺めてから、タクシーで冬の小樽運河を見物に出かけた。私と同年配とおぼしき男性運転手が、車中で次から次へと愚痴っぽい話をする。

北一硝子店

客（私）：冬の北海道って、相当寒いんでしょ？
運転手：お客さん、寒いなんてもんじゃないって。零下25度になったりするんよ。雪が積もって車が出せなくなるから、雪かきしなきゃならんでしょ。この雪を邪魔にならない場所まで捨てに行くのが大変なの。出勤前に2時間位雪かきやると、ホントこの年になるとそれだけで身体にこたえるわな。それに暖房代が馬鹿にならんのよ、いやホント。うちなんか500リットルの石油タンクを一ヶ月で使い切っちゃうよ。それに屋根の雪を溶かすために屋根に電熱線工事をして、電源入れっぱなしだから電気代もかかるわな。うちなんか共稼ぎで年寄りがいないから昼間は暖房が消せるからまだいいけれど、年寄りが同居して一日中暖房つけている家庭はもっと大変だってば。
客：でもお年寄りが暖房なしで、じーっと家に居るってわけには行かないでしょ？
運：そうよ。だから、そういう家では10時になってデパートが開くと、年寄りにデパートに行ってもらうのよ。暖房費節約のために。
客：まっさかぁ・・・
運：いや、本当の話だってば。お客さん、デパートに入って見てご覧なさい。年寄りがゴロゴロしているから。それからさぁ水道管が凍って破裂すると大変だよ。水洗トイレが使えなくなっちゃうでしょ。業者に電話したって、あっちこっちで同じ現象が起こっているから仲々来てくれないわな。だからそういう時は車でデパートやコンビニに行って用を足すんだってば。
客：冬の北海道って、ホント大変なんですねぇ。。。

小樽運河雪景色

小樽運河の倉庫は屋根から沢山の大きな氷柱が垂れ下がっている。踏み固まった雪道を滑らないようにゆっくり歩いていると、小さな子供と嬉しそうに雪玉を投げているお父さんがいる。そんなに雪が珍しいのかねぇと思っていたら、キャッキャッと中国語ではしゃいでいる。あぁそうか、きっと東南アジアの旅行客なのだと周りを見回すと、姿格好は我々と殆ど変わらないけれど、話す言葉が全然違う。運河の橋の上でポーズを取って記念写真を撮る時、シャッターを押す人は『はい、チーズ！』ではなく、『イー、アル、サーン！』と声をかけていた。そういえば昨日昼、小樽ヒルトンのブラッセリーも台湾人、韓国人団体客で一杯だった。松倉さんが「札幌・小樽観光をして見晴らしの良いここでランチを食べて、夜は定山渓温泉に泊まるというのが、人気のあるコースらしいです。たとえ宿泊されなくても、こういう東南アジアの観光客がコンスタントに食事に来てくれることで、うちのホテルも随分助かっています」、と言っていたことを思い出す。

一旦ホテルに戻り、朝からくだらない正月番組ばかり流しているテレビは放っておいて、隣の部屋のベッドに寝転がって「田中角栄」（佐藤昭子著：経済界）を読む。故人と親しく、田中の金庫番と呼ばれた女性が書いたため、ヘェーというようなエピソードも有ったけれど、すべて「田中は偉い、田中は悪くない、周りの人間が悪い」という観点で記述されており、そのまま是とするのはどうかな？という内容だった。夕食予約時間の30分前に再びタクシーで小樽寿司屋通りに向かう。今回の運転手は30歳後半とおぼしき男性だったが、彼の話も面白かった。

電話ボックス脇の積雪

客：小樽はナホトカ市と姉妹都市だし、ロシアとの商取引が多いからですかね、町の中にロシア語併記の看板を見かけますね。
運：ロシアの人の買い物は半端じゃないですよ。お財布は持たないで剥きだしの一万円札を百万円位ポケットにねじこんで、電化製品を山のように買っていくんですよ。
客：日本製の車も買っていくらしいですね。
運：そうですよ。でも、お客さん、税金を逃れるために、連中はどういう方法で車を持って行くと思います？
客：エッ、突然言われても・・・一体どうやって持って行くんですか？
運：そのまま貨物船に積み込むと自動車ということで税金が高いので、埠頭まで運転していって、そこで車体を真ん中から二つに切断してから船に積むんですよ。そうすれば車でなくて金属スクラップということで、キロいくらの僅かな税金で済むでしょう？
客：ちょ、ちょっと、それ本当ですか？だってエンジン回転を伝えるシャフトを真ん中で切断して車体も半分にして、後で溶接して繋げるにしても安全上問題はないんですか？
運：ロシア人は見かけによらず手先が器用なんですよ。日本の一級整備士は図面なしではバラバラになったエンジンを組み立てられませんが、ロシア人の整備士は図面がなくても組み立てられるって、言いますよ。
客：そうは言われてもねぇ・・・俄（にわか）には信じられませんけど、フーン、そうなんですか。

日本の盗難車が横流しされて、ロシアや中国に渡っているという話は聞いたことがありますが、このロシア人による車体切断輸送・再組み立ての話って、本当なんでしょうか？どなたか実情をご存じの方がいらしたら、教えて下さい。