(Kaz)
　多少時差ボケもあるのだろうが夜明けに目が覚め、もはや眠れそうもないので、ワイフを起こさぬようにそっと部屋を出て海岸に散歩に出た。南国なのに早朝の潮風はひんやりしている。水平線の彼方に小さな光が見え、それが徐々に広がり海も空も茜色に染まっていく。ザワザワという潮風の音と、ドドドドッーと絶え間なく聞こえる波の音を伴奏に、朝焼けの空は流れる雲を伴いながら、刻一刻と色を変えていく。前方から走ってくるジョギング走者のザクザクザクと砂を踏みつける足音が次第に大きくなり、やがてスッスッ、ハッハッという呼吸音が聞こえるようになり、私と目線が合うとジョギング青年は「ハーイ」と声をかけてきた。私も反射的に「モーニン(Morning)！」と答えると、青年は笑顔を浮かべ走り去っていった。　

朝食迄まだ時間がある。このままホテルのプライベートビーチを抜けて、カハラ公園まで歩いていこうと思った。右手にはワイアラエカントリークラブの緑の芝生が広がっている。出勤前に早朝ゴルフを行う熱心なゴルファーが、時間を惜しむかのように、気ぜわしいショットを打ってはカートを運転して自分の打った球を追いかけている。チュチュチュチュという鳴き声が聞こえる木を見上げると、濃い緑の葉陰に小さな鳥が次第に高くなる太陽の光を避けるかのように、ちょこんと顔を出していた。カハラ公園の橋のたもとでは親子が釣り糸を垂れ、人間をまるで恐れない鳩の群れが彼等の横をクックー、クックーと首を上下に振って鳴きながら、餌を探していた。そろそろ戻ろう。色鮮やかなジャカランダ、ブーゲンビリア、オーキッド、プルメリアなどの花を楽しみながら、ホテルのカフェに向かった。

早朝のココヘッド岬	出勤前のゴルフ	小枝に止まる小鳥	釣りに興じる親子
ジャカランダ	ブーゲンビリア	オーキッド	プルメリア

海に面した庭のテーブルでは、私以外の家族全員が揃ってコーヒーを飲んでいた。ワイフの朝食はヨーグルトと果物と紅茶だけだが、私はもちろんビュッフェスタイルで朝からしっかり食べる。真理はサラダとジュースだけだが、由美はビュッフェを二往復した後に甘いデザートを忘れず腹に入れる。ファビアンはペストリーを何種類もお皿に乗せてきて、コーヒーに浸しながら黙々と食べる。朝食ひとつ取ってもそれぞれが違っていて面白い。日本人向けに和定食もあったが、色の濃い人口香味料を使ったしょっぱそうな漬物を出しているようでは、イマイチというよりイマ二という感じに見えた。

ハワイアンウエディング

老眼鏡を鼻眼鏡にかけてテーブルを回っているウエイターの顔に見覚えがある。ワイフが「ねぇ、あのウエイターは確かイアンじゃない？ホラ、私達が最初にここに来た時、テーブルについてくれた香港系移民だった人。でも随分年取った感じねぇ」、と私に話しかける。ということは我々も同じ様に年を取ったということですよ。「イアン、元気？」と私が声をかけると、イアンは私達の顔に見覚えあるが名前は思い出せないらしく、ニコニコ受け答えしてからレジに伝票を確認に行った。コーヒーポットを抱えて戻って来たイアンは、さりげなく「コーヒーのお替わりはいかがですか、Mr.Goto」と、名前を入れて会話を続ける。さすがサービスマンである。

この日も陽の照っている間、私達は昨日と変わらぬパターンでノンビリ過ごした。昨日と異なった点と言えば、庭のチャペルで行われた結婚式を見物したことくらいだろう。三十年以上昔の二人だけの私達の結婚式と場所は同じだったが、この日は盛装した紳士淑女の参列者は五十人以上、弦楽四重奏団が音楽を奏でる優雅な結婚式だった。何もせずにビーチで寝そべっているのはさすがに退屈になったのか、子供達はホテルで自転車を借りて近所のショッピングモール（カハラモール）までお土産を買いに行った。そういえば昔は私達もせっせとショッピングしていたものだが・・

クリス夫妻と（上）クリスのCD(下）

夕方7時約束の時刻に部屋の電話が鳴った。「Hello, Kaz!」と聞き覚えのある陽気な声はホノルルの友人クリス(Chris)だ。今日はホテルのメインダイニング「ホク」(Hoku)に、我々一家とクリス夫妻のために、7名のテーブル席を予約してある。ニューヨーク出身のアメリカ人クリスと私とは十年前に日本で知り合ったが、彼は現在ホノルルで歌手をしており、二つのクラブで毎晩歌っている。奥さんのリリー(Lily)はアルゼンチン出身のオーストラリア人で、現在ホノルル動物園で飼育係をしている。二人はなんとアフリカで知り合ったというユニークなカップルである。早速「ホク」(TEL: (808)739-8888)に向かうと、待っていた二人が我々全員にレイ（＝ハワイの生花でつくった花輪）をプレゼントしてくれた。お返しに私は日本から持って行った彼の好きな日本酒「裏霞　禅」のボトルを差し出す。固い挨拶は抜きでまずはシャンペンで乾杯し、次から次へと話の花が咲いた。
私　　「クリス、二枚目のCDを出す予定はどうなった？」
クリス「今準備中だけれど、今度はハワイ語で歌う曲も入れようと思っているんだ」
早苗　「リリー、今でも象の飼育係なの？シャベルで糞を掃除するなんて重労働だわね」
リリー「私は鳥の係になったの。今度は頭の上からしょっちゅう糞をあびているわ」（爆笑）

（Yumi)

夜中に「プシューッ」という不思議な音が表からするので、なんだろうとベランダに出てみると、なんとイルカが部屋のすぐ下で泳いでいました。両親が滞在した部屋（海に面して素晴らしい！）と違って、私たち（Yumi、Mari、ふぁぶ）が泊まった部屋はホテルのラグーンに面していたのですが、それはそれでまた素晴らしかった！何が素晴らしいって、そのラグーンはホテルのイルカさん達の住居なので、ベランダから昼も夜も、常に泳いでいるイルカさんに会える（見えるといったほうが的確ですが）のです。

昼間は、ホテルで子供対象に「イルカと遊ぼう！」みたいなイベントが毎日行われているので、部屋からでも、笛の音や、お姉さんの「Vereeeey Good !」「Comooooon !」とかいう声や、子供たち全員の拍手やら、イルカの鳴き声が聞こえます。子供が「こわいよー、ぬるぬるして生臭いよー」と半べそを書いているのに、「ほら、もっと近づいて！イルカにキスして！」と一生懸命カメラをかまえているお父さんたちは、日本人でもアメリカ人でも同じでした。参加費が馬鹿高いらしいので、記念写真を必死に撮ろうとする親の気持ちもわからないでもないのですが、あんなに働かされて（一日に何回もイルカスクールはあるのです。子供たちに触られ、泳がされ、ジャンプさせられ、キスを強制され、鳴かされ、かと思ったら泣かれ、疲れるだろうよ）イルカさんはきちんとお給料をもらえているのか、他人事（他イルカ？）ですが心配です。夜は、勝手に泳いでいるイルカさんたちですが、ホテルのベランダからお客が手を叩くと、餌をもらえるものだと思うらしく、部屋の下で待機しているイルカさんもいて、ちょっと気の毒でした。

さて、朝食をたっぷりたべてから、ハワイの海を泳いでみました。（昨日はつかるだけだったので）かなり遠くまでいっても、遠浅で、足が着く上に、水は本当に透明で、足元を魚が泳いでいきます。私の側でシュノーケリングをしながら魚を採っていた男の子たちもいたくらいです。ちなみに、ハワイ特産の魚、たとえばマヒマヒ（右写真）などは、はっきりいっておいしくない！顔はすごく愛嬌があってかわいいのだけれど…基本的にハワイの魚（特に白身魚）は大味でまずいと思うのですが、どなたか、おいしい魚を知っていたら教えてください。

海に浮かんでいると、本当に気持ちがよくて、浮き輪でぷかぷかと浮いてぼーっとしていたら、ホテル専属のビーチボーイのお兄さんが「ゴートーサーン！」とボートに乗ってやってきました。どうやら、家族が沖にどんどん離れていく私を心配して、お兄さんに来てもらったらしい。すみませんでした！！砂浜に戻ると、Sanaeちゃんがご立腹。「ちょっと！あなたはどんどん遠くにいっちゃうし、ふぁぶもいないし、どうなってるのよ？」全くもって人騒がせな私たちです。あれれ、そうなの？どこにいっちゃったんだろね、と言っていると、「写真をたくさん撮ったよ！」と興奮したふぁぶが、ひょっこり帰ってきました。すぐそばのゴルフクラブから出発して、海辺をずーっと探索したそうな。「空も海も青くて、何を撮っても絵になるし、何を撮ってもきれいだから、ひょっとして自分はすごいカメラの腕がいいんじゃないかという錯覚に陥って気分がいい」んだそうで、ものすごい数の写真を撮っていました。

ホテルのプール	手軽に楽しめるカヤック	バスローブでリラックスしてビールを飲む
ふぁぶの撮ったハワイ風景1	ふぁぶの撮ったハワイ風景2	ふぁぶの撮ったハワイ風景3

プールで少し遊んだ後、「部屋の冷蔵庫のビールは高いし、遠慮なく飲みたいから買出しに行きたい」というMariちゃんと一緒に自転車でカハラモールへ。私たちが絵葉書や、シュノーケリング用のめがねを見ようかねぇ、と言っている横で、Ｍariちゃんはビール売り場へ直行。Mariちゃんのビール消費量はすごいもので、気づくと缶ビール3本くらい平気であけているのです。スーパーでビールを1ダースかった彼女が一言。「何日持つかなぁ」それを自転車の両手のところにぶら下げてホテルまでお持ち帰り。すごいぞ！その割に、ビールっぱらでもないのでうらやましい限りです。

夕方はみんなでホノルルへ足を延ばしました。一緒にデューティフリーショップに入ったものの、「免税されていても高いものは高い」という悲しい事実にすぐ気づいた私とふぁぶは、みんなと（そしてブランドショップと）別れて、ローカルなお店をぶらぶらしました。まずはなんといってもABCストア！面白いものがたくさんあります。プルメリアのバスソルト、ハワイ語についての本、そしてふぁぶの両親にＴシャツも買いました。それから、飲み続けたら急激にやせる！でも一日3錠以上飲むと危険です、というすごそうなサプリメントを発見。思わず買いそうになるものの、ふぁぶにとめられ、しぶしぶあきらめました。その後、約束までまだ時間があったので、今回ビキニが思ったよりひんしゅくを買わなかったのに気をよくした私は、ハワイでもビキニを！と、Mariちゃんお勧めのロコブティックへ。かなり「若い」スタイルが多いので、大丈夫かなと心配しつつ、黒地にオレンジの花柄がついたビキニを購入。こういうときに思うのですが、ふぁぶは下着や水着の試着に付き合うのは全然平気なのです。自分が水着になったり、温泉はいったりは、ものすごくはずかしいっていうのに、変なの。なんだか、「はずかしい」で引っかかるところが違うらしい。試着室から「この色違い持ってきて」「もう1つカップが大きいのないか聞いてみて！」とか叫んでも、余裕で持ってきてくれます。でもこれって、たぶんすべての男の人がこうではないはず。実際、ロコブティックで買い物に付き合っていた男性はふぁぶだけだったし…。以前パリの高級下着ショップでSanaeちゃんが色々下着を選んでいる間、 Kazさんがとても居心地が悪そう（べつに怒っている訳ではないのだけれど、辛そうだった）で、とうとう「15分後にまた戻ってくるから」といってお店をでていってしまったことがありました。Sanaeさんは試着に忙しく、気にもしていませんでしたが…。これは、お国柄なのか、それとも年代の違いなのでしょうか？

ハワイでおなじみABCストアー	水着がいっぱいロコブティック	フットロッカー

晩御飯はホテルのメインダイニング「ホク」（イルカちゃんの名前らしい）で、両親のお友達のくりすさんとその奥さんのりりぃさんも一緒。食事中、ふぁぶが座った席が、ちょうどクーラーが思いっきり出てくるところだったらしく、「さむいよー」と頭が冷えたふぁぶのために（でも窓側のSanaeちゃんとりりぃさんは暑がっていたので、クーラーを切ってくださいと言い辛かったらしい）、Ｍariちゃんが気を利かせて、お店の人に「すみません、ちょっと寒いんですけれど…」といってくれたのですが、お店の人は、Mariちゃん用にとストールを持ってきてくれたのでした。まさか、これを頭にかぶるわけにもいかないよね、と私とMariちゃんに頭を、いいこいいこされて暖めてもらっていたふぁぶ。かなりあやしい風景だったでしょう。まぁそのハプニング（？）を除けば、お料理もおいしかったし、特にデザートの盛り合わせ（お皿の大きさに注目！）に、私は大満足。勿論、完食です！

部屋に戻って、Mariちゃんに買ったばかりの水着を見せると「えぇぇ、これ、私がサイパンで買ったのと全く同じ水着！」うそー！何百種類もある水着から柄も色もカットも全く同じものを選ぶなんて、さすが姉妹？さぁ、新しい水着を着て明日はウエイクボードに挑戦！