２章：カンカル　へとへとになった夕食

モンサンミッシェル見物を終え、宿泊先のルレ・サンミッシェルホテル(Relais Saint-Michel)でシャワーを浴びて夕刻迄休息し、車を西へ１時間飛ばして牡蠣の養殖で名高い大西洋に面した漁村カンカル(Cancale)まで夕食に行く。そこにある「オリヴィエ・ロランジェ」(Oliver Roellinger)というレストランは、ブルターニュ地方でも評判のシーフードの店として知られている。私が注文したシーフード盛り合わせ（小海老、マグロ、ホタテ、鯛）が運ばれて来た時、「フムム．．．この盛り付け方はどこかで見た記憶がある？」、と考え込んでしまった。しばらくしてから東京銀座の「レカン」（Ｌ’Eｃｒｉｎs）（注3）で、同じようなプレートで出された前菜のことを思い出した。「レカン」の盛り付けはもう少し小振りで種類も多かったが、この店の小海老はトマトとピーマンのピューレで、マグロはステーキ風にレアであぶって岩塩の粒が乗せてあった。ホタテはハーブのドレッシング、鯛はバルサミコソースでシャンピニオン（＝マッシュルーム）が付け合わせてあった。ここの名物である鯛のカレーソースを食べて、チーズ、デザート、コーヒーで終了するまで、夕食に何と3時間かかった。ワイフは日本からの長旅プラス一日のドライブ・観光で疲れ切っており、「こんな強行軍の日に、わざわざ5時間もかけて（＝往復2時間）夕食を食べるなんて。。」とウンザリした表情。ヘトヘトになった彼女はたまらず食事を中座して、駐車場の車の中で横になってしまった。それでも食事を中断せずに最後まで平らげた私のことを、「あなたは、ディナーと私と、どっちの方が大切なの？」とワイフはあきれた表情で眺める。うーん、どっちも大切なんですけどぉ。。。せっかくここまで食べに来たのだから、やっぱり残さず食べてみたいんですよねぇ。。。

ロランジェ入口	魚の盛り合わせプレート	ワゴンからチーズを	ホワイトチョコレートとスフレ

真夜中過ぎに寝静まったホテルに戻ったが、私はいつもの習慣で朝5時には目が覚めてしまった。昨晩のダメージから少し回復したワイフを誘って海岸を散歩すると、奇巌城モンサンミッシェルがはるか彼方に霞んで見え、私達の辺り一面には霧が立ち込め、まるで雲海の中を歩くかのような錯覚を与える。やがて海から昇って来て水面を照らす朝日は思わず両手を合わせて拝んでしまうほどの神々しさで、宿泊しなければ絶対に見ることの出来ない素晴らしい朝景色を、しっかりと目に焼き付けた。

水面の朝霧に下部が霞むモンサンミッシェル	大西洋の日の出

（注3）「レカン」（Ｌ’Eｃｒｉｎs）:銀座４丁目「御木本真珠店」隣にあるフランス料理店