４章：プラザ・アテネ

あわただしい週末旅行が終わり、パリのモンテーニュ通りにあるホテル「プラザ・アテネ」に旅装を解くとワイフは大喜び。なぜならホテルの目の前に彼女がお気に入りのイタリアブランド店「PRADA」が有るから。私はがっかり。なぜならこのホテルに入っている三つ星レストラン「アラン・デュカス」（注6）の料理が食べたくて、わざわざ「プラザ・アテネ」に宿泊したのに、アラン・デュカスは8月1日から2週間のバカンスを取ってしまったから。この時期パリの有名店を訪れる時は、その店の休暇日程をチェックしなければいけない、という教訓を身にしみて感じた次第。

ホテル「プラザ・アテネ」のサービスの素晴らしさについては旅行雑誌・観光ガイドブックで語り尽くされているが、実際に宿泊してこのホテルの格の違いをハッキリ感じた。中庭を見下ろす客室の壁には年月をかけて育った蔦がからまり、分厚いカーテンの外にある窓辺に置かれた植木鉢の花に、ベッドメーキングの度に水が施される。室内のグラスは歯磨きコップにいたるまですべてバカラ（＝フランスの高級ガラス製品）で統一してあるし、浴室は大理石張りである。客室のテレビには付属キーボードがセットされていてインターネットにアクセス出来るし、ミニバー（冷蔵庫）にはシャンペンからリキュールに至るまで、30種類以上のミニチュアボトルが用意されている。このホテルの伝説的コンシエルジェ（＝ホテルのお客様相談係）の話が、雑誌「マリークレール」掲載されていたので紹介しよう。

部屋から見た景色	客室	浴室	ﾐﾆﾊﾞｰ

あるお金持ちから「自分が好きな女性にプロポーズをしたいのだが、彼女にoui(ハイ)と言わせる演出をしてくれないか」と、相談されたこのコンシエルジェは、「お任せ下さい」と二つの提案をしたそうだ。さてこのお金持ちは「プラザ・アテネ」最上階の一番豪華なスイート部屋を予約し、くだんの女性にその部屋の鍵を渡した。彼女が約束の時間にその部屋を訪れ鍵を開けると、なんとその広いスイートルーム一面は真っ赤なバラの花で埋め尽くされていた。。。ビックリして口も聞けない彼女の前に、部屋の奥で待ちかまえていたお金持ちが現れ、「これは貴女に対する私の気持ちです」とひと言。普通これだけでも充分過ぎるのだが、その後この金持ちは「下のバーで飲み物でもいかがですか？」と彼女をバーに誘った。二人がバーの止まり木に腰掛けると、バーテンダーが黙ってよく冷えたカクテルを二つ彼等の前に置いた。カチンとグラスを合わせて乾杯し、彼女がグラスを口に運ぼうとすると、カクテルグラスの底がキラリと光った。「これは何？」と彼女が白い指でグラスの底から拾い上げたものは、なんとダイヤモンドの指輪だった。隣の男がこう言った。「これが貴女に対する私の気持ちです。私と結婚してくれませんか？」彼女の返事はもちろん「Oui」。うーん、こんな演出、真似出来ませんねぇ。え、そんな金は持っていないんだから、真似しようったって無理だって？ご明察！

（注6） アラン・デュカス(Alain Ducasse)　世界的に有名なフランス人シェフ。パリのプラザアテネの「アラン・デュカス」、モナコの「ルイ１５世」と二つの三つ星レストランを所有することから六つ星シェフの名がある。ニューヨークに続き、2004年12月に東京銀座に出来るシャネルビルに支店をオープンする予定。
詳しくはhttp://www.alain-ducasse.com/public_us/en_ce_moment/fr_encemoment.htm