１章 「好運来」：ジャッキーチェンも訪れたパリの中華食堂

　ここ二、三年は留学している長女の由美に会うために、年に一度はパリへ行くのが常となっている。10日前後の旅行はパリともう一ヶ所滞在するのがパターンで、一昨年はブルゴーニュ、昨年はボルドーを巡ったので今年は「食の都」といわれているリヨンに行くことにした。今回利用した大韓航空はＪＡＬやエールフランスのエコノミー料金とほぼ同じ値段でビジネスクラスに乗れるので大助かりである。ソウル経由になるため時間が余計にかかるというマイナスはあるが、機内食にビビンバやプルコギといった大韓航空ならではの料理が出るので楽しめるし、ソウル空港での乗換待ち時間にシャワーを無料で浴びられるというサービスも悪くない。シャンペンとカナッペの後に、アンチョビをトッピングしたシーザーズサラダと、カニのクレープに続いてビビンバがあつあつご飯とスープと一緒に登場したので、シャブリワインを注文し、これから先一週間はコレステロールを忘れて美味しい物を食べよう、と心に誓ったのであった。

パリのシャルルドゴール空港に着くと迎えに来ていた由美にワゴンタクシーをつかまえてもらい、約30分程でパリ市内のHotel du Louvre（オテル・ドゥ・ルーブル）にチェックインする。「機内食を3回も食べたのに、まだ食べるの？」という次女真理の呆れた視線を感じつつ、下町シャトレにある「好運来」という、レストランというよりは中華食堂といった方がピッタリの店に足を運んだ。由美お勧めの安くて美味しい店だそうである。入口の壁にジャッキーチェンのサイン入り色紙が貼ってあった。香港の映画スターが来る位だから味はかなり期待できるかな？と思いつつメニューに指を走らせる。結局親子４人で注文したのは、海老チリソース、海鮮サラダ、鴨と豚肉のロースト、はるさめ野菜炒め、そして特製の五目麺と炒飯を青島（チンタオ）ビールを飲みながら平らげる。この店で感心したのは一品一品味付けがすべて異なり、香辛料がしっかり効いているので、それぞれが美味しかったことで、日本の二流中華料理店だと出てくる物、出てくる物皆味付けが似ていて、おしなべて化学調味料の味がきつすぎるので、一人当たりわずか1,800円程度の店でずいぶん得した気分になれた。パリ初日は好運来かな？