６章　パリの日本食：たまにはラーメン、鰻重など

来来軒：東京で食べるラーメンと同じ味

昨晩食べた某料理大家の特別料理のせいか、リヨンの町を歩いている途中でお腹がグルグル鳴り出して、あわててカフェに飛び込んだ。『今日は胃にやさしい料理だな』、とトイレで屈んで脂汗をかいている時に考えた。普通そういう時には『今日は食べるのを控えよう』と考えるのだと思うけど。。午後２時にパリに戻り、その足で授業に出席した由美を除いた親子三人でショッピング。Baccarat（バカラ）でワイングラス、Hermes（エルメス）でバッグ、Cartier（カルティエ）で指輪を探す。買い物の途中で小腹が空いたので立ち寄ったのが、通称日本人通りと呼ばれるほど日本企業の支店や和食の店が多いSt. Anne（サンタンヌ）通りにあるラーメン屋、「来来軒」である。ここのラーメンはいかにも日本人向けという感じで毎回訪れるけれど味のバラつきが少なく、東京で食べるラーメンと遜色ない。周りの客も日本人ばかりで。メンマと餃子をつまみにアサヒスーパードライを飲んでいると、パリにいることを忘れそうである。「みぃ〜そ一丁、ぎょ〜ざ一丁ネ」、と注文を確認する東洋人店員の日本語がおぼつかないことも、昨今東京の店の東南アジア人店員に慣れているので違和感はない。
（来来軒　TEL 33-1-4703-3859）

（注）この時点では「味のバラつきが少なく、東京で食べるラーメンと遜色ない」と書きましたが、2001年に訪れた時アレッと思う程味が落ちていました。推薦取り消しです。

野田岩：江戸の鰻老舗店がパリに

地下鉄ルーブル駅とオペラ駅の中間にあるピラミッド駅。ここから徒歩１分の所にあるのが日本で創業150年の鰻の老舗「野田岩」パリ支店。パリで鰻重をたべるなんて、と思うかもしれないが、日本人だけでなくフランス人客も結構訪れているようだ。多分ボルドーに鰻の赤ワイン煮という郷土料理があるからかもしれない。この鰻の赤ワイン煮は昨年食べたがハッキリ言ってまずい。泥鰌（ドジョウ）のブツ切りを赤ワインでクタクタに煮たようなもので、泥臭くて煮詰めたワインが気持ち悪さを一層増す感じだった。暖かいご飯の上に炭火で香ばしく焼いてタレをつけた鰻をドーンとのせて、山椒をパラパラっとふって食べる鰻重に慣れた日本人にとって、鰻の赤ワイン煮はとても食べられない代物であると思う。
（野田岩 TEL 33-1-4286-0342）

衣川（きぬがわ）：お薦めの日本料理店

ここも私達がパリに来る度に必ず訪れる日本料理店である。チュールリー公園のひとつ裏手の通りで場所は少しわかりにくいが、味はシャンゼリゼ通りの「燦鳥」（サントリー直営店）や、パリ在住デザイナー高田賢三ごひいきのサンタンヌ通りの「伊勢」よりも、私は美味しいと思う。日本人ビジネスマンがここでフランス人を接待している風景をしばしば見かける。ワイフがいつもオーダーするのはメニューにはない特選ちらし寿司。230フラン（＝3,450円）で、その日の一番良い魚の切り身が少しずつ酢飯の上に載っている。今回由美の親しい友人二人も招いて、日本酒「久保田千寿」を飲みながら五人で食べた料理は、次の通り。【特選ちらし寿司、キュウリと鰺の酢の物、ワカメのヌタ、刺身盛り合わせ（マグロ、イカ、ヒラメ、ウニ）、鰈（かれい）の唐揚げ、牛肉のたたき、天麩羅盛り合わせ（海老、イカ、白身魚、アスパラガス、野菜かき揚げ）、椎茸の土瓶蒸し、デザートは粒あんの和菓子とメロンと焙じ茶】
（衣川　TEL 33-1-4260-6507）

潮騒：香港系フランス人親子が経営する大衆割烹店

下町シャトレはすぐそばにパリ市庁舎（Hotel de vile）や超モダンな近代美術館ポンピドーセンターが(Centre Georges Pompidou)があり、いつも人通りが絶えない。ここに由美の友人である香港系フランス人ザビエ(Xavier)親子が経営する和食の店「潮騒」がある。「衣川」を日本料理店と呼ぶなら、ここは大衆割烹と呼ぶのがふさわしいような小じんまりとした店である。正直言って握り鮨のネタは今イチだが、揚げ物はカリっとしていてご飯の炊き方も悪くない。何よりも気取らず値段も手頃な店なのである。冷や奴をつまみにキリンビールを飲んでカツ丼をかき込んでいたら、「ユミパパ、これサービスよ」と甘海老の頭で出汁をとった味噌汁を出してくれた。ザビエと弟のエリック（Eric）とは前回パリに来た時、お店がはねた後で一緒にカラオケに行って、明け方まで歌った仲である。今回は日本酒と海苔を土産に持って行ったら大変喜んでくれた。
（潮騒 TEL 33-1-4015-9866）