エピローグ：ダスビダーニャ

　7月29日の午後、荷物のパッキングを済ませコーヒーを飲んでいると、メイドのイリーナが小さな箱を手に持って入ってきた。彼女はロシア語で「たった二日の滞在で、もうお帰りになるなんてとても寂しいデス。日本のお茶をいただきましてアリガトゴザイマース。これをどうぞ」と言って私達にチョコレートをプレゼントしてくれた。感激したワイフは「イリーナ、元アエロフロートのスチュワ―デスなのだから、これ使って」と、行きのＳＵ576便でもらったアエロフロートのトラベルキット（歯ブラシ・スリッパなどのセットが入った袋）を、直ぐに手渡した。そしてI君に教えてもらったロシア語で「イリーナ、バッシュ　ボルシチ　ヴイル　オーチェン　フクースヌイ！」（イリーナ、あなたのボルシチはとても美味しかった！）と　言ったものだから、イリーナは跳び上がって喜んだ。 それではイリーナの微笑みを思い出しながら、「ダスビダーニャ」（さようなら）

【2003年9月29日　了】